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【社会・心理用語集001】ラベリング理論と逸脱行動

2013年03月23日
【用語】ラベリング理論

 

ラベリング理論(ラベリングりろん、英: Labeling theory)とは、《逸脱行動》に関する理論であり、1960年代にシカゴ学派に属するハワード・ベッカー(Howard S. Becker)らによって提唱されたものである。

 

それまでの、《逸脱行動》を単なる社会病理現象として扱ってきたアプローチとは一線を画し、《逸脱》というのは、行為者の内的な属性ではなく、周囲からのラベリング(レッテル貼り)によって生み出されるものだ、と捉えるものである。

 

それまでの社会病理学的なアプローチでは、たとえば“髪を染めている者が「不良」だ”などと勝手に定義することによって「《不良の定義》は客観的に成立する」としてしまうような、非常に単純な考え方をしていた。

 

だが、ベッカーは1963年に初版が発刊されたOutsidersにおいてそうした考え方を排し、「逸脱などの行為は、他者からのラベリング(レッテル貼り)によって生み出される」と指摘した。

 

社会集団は、これを犯せば逸脱となるような規則をもうけ、それを特定の人々に適用し、彼らにアウトサイダーのラベルを貼ることによって、逸脱を生みだすのである。

                    『アウトサイダーズ』

 

この理論は、従来の逸脱論が逸脱者にばかり着目していたのに対し、規則をつくり執行する人々と逸脱者を対等に扱い、双方の相互作用過程として逸脱を捉えているのである。

 

ベッカーの同理論は、マートン自己成就的予言E・M・レマート第二次逸脱といった概念を基に発展した。

 

ベッカーの理論はやがて「ラベリング理論」と呼ばれるようになり、逸脱論の中に新たな流れを生みだしてゆくことになったのであり、社会学史上重要な理論である。

 

このラベリング理論は後にJ・I・キツセやM・B・スペクターらにより構築主義へと展開されていった。

 

なお、ベッカーは『アウトサイダーズ』において、マリファナ使用者やジャズメンへの聞き取り調査や参与観察を行ったのであるが、そうした調査結果を基に理論を構築してゆく手際の良さによって、『アウトサイダーズ』はしばしば社会学研究の手本とも見なされている。

 

出典:wikipedia