【哲学用語集002】アブダクション・アブダクティヴな推論・ヒューリスティックな仮説
2013年03月23日
【用語】アブダクション
目次
アブダクション、アブダクティヴな推論、または最良の説明への推論(古典ギリシア語: ἀπαγωγή、apagōgē /英: Abduction、abductive reasoning、inference to the best explanation)は、ある個別の事象を最も適切に説明しうる仮説を導出する推論。
概要
仮説形成や仮説的推論などと訳されている。古くはアリストテレスがアパゴーゲー(古典ギリシア語: ἀπαγωγή、apagōgē )について議論している。
のちにアパゴーゲーはアブダクション(abduction)と英訳された。チャールズ・サンダース・パースは演繹(deduction)、帰納(induction)に対する第三の方法としてアブダクションの語を用いた。
ある結果や結論を説明するための仮説を形成することを言うこともある。
また、哲学やコンピュータの分野でも、定義づけされた言葉として使われている。
アブダクションの意味や思考法は、演繹法や帰納法ともまた異なるものであり、失敗の原因を探ったり、計画を立案したり、暗黙的な仮説を形成したりすることにも応用できる。
例えば、プログラムの論理的な誤りを探し出し直すという過程では、アブダクティヴな解釈と推論が行われており、一般的な立証論理の手法と通じるものがある。
アブダクションは、関連する証拠を――真である場合に――最もよく説明する仮説を選択する推論法である。
アブダクションは観察された諸事実の集合から出発し、それらの事実についての最も尤もらしい、ないしは最良の説明へと推論する。
アブダクションという用語はまた、単に観察結果や結論を説明する仮説が発生することを意味するためにもときおり使われる。
だが哲学やコンピュータ研究においては、前者の定義がより一般的である。
心理学などではヒューリスティクスと呼ばれている。
演繹、帰納、そしてアブダクション
演繹は、Aの帰結としてBを導くことを可能にする。 ほかの言い方をすると、演繹は仮定されたことの諸帰結を導く過程である。 妥当な演繹は、諸仮定が真であれば結論も真であることを保証する。
帰納は、あるAがBを必然的に伴うときに、Bのいくらかの事例を挙げることからAを推論することを可能にする。 帰納はいくらかの後件を観察した結果として前件を蓋然的に推論する過程である。
アブダクションは、Bについての説明としてAを推論することを可能にする。
このために、アブダクションは「AはBを必然的に伴う」の前提条件Aがその帰結Bから推論されることを可能にする。 このように、帰納とアブダクションは、「AはBを必然的に伴う」のような規則が推論のために使われる方向が異なる。
アブダクションそれ自体としては、形式的には論理学でいう後件肯定の誤謬に等しい。
このように、アブダクティヴな推論はそこで提起される原因が疑わしいので、「前後即因果の誤謬 (Post hoc ergo propter hoc)」という時間の前後関係を因果関係と混同した虚偽の論法に似ている。
論理に基づいたアブダクション
論理学では、説明はある領域を表現する論理的理論Tおよび諸観察の集合Oから行なわれる。
アブダクションはTにしたがってOについての諸説明の集合を導き、そしてそれらの説明のうちの一つを選択する過程である。EがTにしたがいつつOの説明であるためには、Tは二つの条件を充足しなければならない。
OはEかつTから導かれる。
EはTと無矛盾である。
形式論理学では、OとEは諸リテラルの集合であると想定されている。
これら二つの文はEが理論TにしたがいつつOの説明であるための条件である。
通常、これら二つの条件を充足する可能な諸説明Eに対して、ある他の最小限の条件が課せられるが、これは(Oを内含することに寄与しない)的外れな諸事実がそれらの説明に含められることを避けるためである。
次に、アブダクションはEのある要素を選択する過程でもある。
「最良の」説明を表現する一要素を選択する基準には、単純性、より蓋然的であること、ないしはその説明の説明力が含まれる。
出典:wikipedia