日々思うこと

政治思想・哲学を中心に考察していきたいと思います。

【倫理・道徳004】イルカの肉に含まれる水銀含有量について

my日本からの転載
2012年08月02日
海豚の肉に含まれる水銀についての考察

 

目次

 

 

 

以前に書いた日記の【水銀mercury】の項目だけを抜粋して編集する。

その日記はシー・シェパードの支持者とのネット上での対話を元に話を展開している。

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この歳になって「水銀」と「水星」が同じマーキュリーであることを知ったというのは自分で言うのもなんだが情けない。忘れていたんだ。そう、忘れていたんだよ。とりあえず、そう思うことにする。

 

イルカやクジラの肉に含まれる水銀

 

イルカやクジラの肉に水銀が含まれているというのは、彼らシー・シェパードがたまに使う主張である。映画"the Cove"の中でも登場しているためにそのインパクトは大きいようで、特にその桁外れに高いイルカ肉の水銀含有量はイルカ漁批判の論理的根拠の一つとなっている。

 

日本政府は悪意に基いて国民の健康を害しようとしているわけではないということ

 

特にこの水銀中毒は水俣病と比較されることが多く、日本政府は国民を死に追いやろうとしているというのが彼らの主張である。余談ではあるが、「日本政府は国民を死に追いやろうとしている」といった主張は、あまり大した話ではないが、ギルバート・ライルの言うカテゴリ・ミステイクを犯しているとはいえなくもない。

 

ある人物が、「大学」内を案内されて、様々な施設や機関を紹介された後で、ところで「大学」はどこにあるのですか?と質問する場面が『心と概念』のなかで紹介されている。これは彼らの用いる「日本政府」という用語にも当てはまる。そもそも日本政府というものには意志があるとは言いがたく、厳密に言えば、それぞれの行政機関、立法機関があるだけで、日本政府のアイデアとして「国民を死に追いやろうとしている」ということはありえない。

 

行政機関や立法機関の認識上の不備が起こる可能性

 

しかしながら、行政機関、や立法機関がこれらの問題を認識できずに、あるいは認識しているにも関わらず、各地域や産業を守ろうとした結果として、対策が後手に廻るというのはよくあることであろうとは思う。言い換えると、各種行政機関、立法府が如何にこのことに取り組むか、あるいは認識している人間が、それを各種機関に認識させるかということがより重要であるように思う。この当たりの活発さが日本において欠けていると言われれば概ね否定はしない。

 

日本の民間および公務員の関係性について

 

日本の官と民の関係性についての議論は色々できそうであるが、その点をここで考察することは話を大きく逸脱させることになってしまうので、ここで考察することは避ける。ただ単に日本人にはボランティア精神が欠けていると投げやりに結論付けられるほど、問題は簡単ではないだろうという観測だけは述べておく。

 

水銀含有量のソースとしてのザ・コーヴ

 

話を戻すが、彼らが水銀の含有量を用いて批判する場合の出典はthe Cove以外の情報は乏しく、実質的にその水銀含有量を把握しているのは日本の公的機関ばかりであるというのが実態であろう。桁外れに高い水銀含有量の資料についての検討する前に、指摘したい点は、その数字以外の日本の公的機関が発表しているイルカ肉の水銀含有量は、暫定的安全基準値を上回っているということである。

 

安全基準が公的機関によって順守される場合と例外的事例について

 

これについて、暫定的安全基準値を上回ったからどうだ、という対応は日本の公的機関からは何も語られておらず、単にそれでも安全だと繰り返している。この安全基準値の扱いというのは、それぞれの組織や機関によって対応に差があるというのは感じる。

 

例えば、ある水源において、水の中に含まれるホルムアルデヒドの含有量が基準値を今年上回ったが、彼らはその水源からの水の供給をやめている。ところが一般的に社会において、安全基準をコントロールできなくなり、かつそれでもそれが必要と判断された場合、それでもいいんだといった流れになるようである。あくまでも安全基準値が守られるためには、その管理が上手くできる時だけのようである。

 

国立水俣病総合研究センターおよびJWA日本捕鯨協会の調査報告

 

イルカ肉に含まれる水銀の数値については具体的にその数値を挙げて考察する必要があり、その調査の実態なども示す必要があるだろう。太地町における水銀の健康被害なども含めて具体的に調査した機関として、最も高度に調査している機関は国立水俣病総合研究センターであろう。

 

残念ながらJWA日本捕鯨協会による科学的な調査に関する報告は、私が見ても不十分に思える。資料に関しても古く、逐次更新されていない。文体に関しても安心と安全が謳い文句となっており、科学的というよりも、保身的な回答という印象すら感じられる。こういったタイプの公的機関は日本国内に溢れかえっているのであろうと推測する時、妙な虚しさを感じるというのも否定しがたい。最低限の説明責任は果たすべきだろう。

 

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(以下追記

 

水銀含有量2000ppmについて

 

さて、太地町における水銀の具体的な数値に関する話に移ろう。シー・シェパードの支持者の中に、イルカの肉には2000ppmの水銀が含まれており、とても危険だという情報をもらった。捕鯨問題に興味がなかった私はその情報が確かなのかどうか確かめることにしたのだが、幾つかの公的機関が示している数字を目にしてみるとそんな数字はどこにもなく、そのあまりにも高すぎる数字に当初デマなのではないかと思ったが、その内情報源に行き着いた。

 

暫定基準を上回っているという事実

 

実際にその2000ppmという数字に出会うよりも先に、別の公的機関が示しているイルカ肉の水銀の含有量を目にしたわけだが、先程も示した通り、実際に暫定基準値を上回っていることには正直驚いた。そしてそれでも尚、政府はイルカ漁を禁止せずにいるという事実にも驚いたのである。実際に暫定基準値を少しばかり上回っており、市場にイルカ肉が流通している。

 

この公的機関の決定の是非には様々な意見があるだろう。この事実を前にして太地町の住民の健康状態を国の公的機関は把握しているのかどうか気になったのだが、その調査を行なっていたのが国立水俣病総合研究センターなのである。

 

国立水俣病総合研究センターとザ・コーヴ

 

2000ppmという数字は欧米において広く膾炙されているようであり、恐らく一般的にはこれ以外の数字は流布されていないと思う。この数字を広く世界に広めたのが、映画ザ・コーヴであるのはいうまでもない。この数字を持ちだしてきたシー・シェパードの支持者に関しては他の数字も持っているようだったが、話に持ち出す数字はこれだけである。そしてこの人物は映画によって広められたこの数字の背後までは深く掘り下げていなかった。それはそうだ、それに関する情報を探り当てるためには日本語がある程度知らなければならないのだから。

 

北海道医療大学准教授の研究結果

 

この2000ppmという数字は北海道医療大学薬学部、遠藤哲也准教授(当時講師)による研究が元であり、実際に直接ザ・コーヴの製作者が取材している。後に遠藤教授はザ・コーヴの製作者が反捕鯨を訴えるための映画製作を行なっているとは知らず、意図的に彼らにとって都合のいいように編集されたとして製作者を訴えている。

 

基準値を超えた水銀の含有量と肝臓サンプルおよび「うでもの」

 

ザ・コーヴによってイルカ肉には2000ppmの水銀が含まれていると広く流布されているが、もう少し正確に言うと、市販されているイルカの肝臓のサンプルの中で最も高い数値として現れたものであり、平均的な数字はだいぶ下がる。このイルカの内臓は「うでもの」として通販などでも買えたようだが、最近は南氷洋でとれた鯨の内臓のみが「うでもの」として出回っているだけである。

 

一般的に太地町周辺でこの太地町産のイルカの内臓が売られているのかどうかも調べてみたが、実際に今も和歌山県内では市場に出回っているようである。公的機関において妊婦や子供はイルカ肉を食べないようにと注意を促しているようである。それがどこまで地域住民に知れ渡っているのかは私は知らない。

 

捕鯨を前提とした研究と日本の対応

 

話を先ほどの支持者との対話に戻そう、彼女の話によると、彼女の大学の教授は実際に日本の公的機関でイルカに含まれる水銀の調査をしていたようだが、日本から調査延長の許可が降りずにやむなくカナダに帰国したらしい。その際に何故か日本には「出る杭は打たれる」っていう諺があるがまさしくそれだと非難された。個人的にはまあそうだろうなとは思ったが、同時にこの女性の教授が反捕鯨前提で研究しており、さらにそういった活動をしていたであろうことは推測するに難しくない。それを警戒した組織との対立があっただろうなと個人的には思った。

 

とまあ、適当にこの辺でまたストップ。